高齢者向けの電動アシスト自転車、何がおすすめかを調べ始めたきっかけは、実家の親が近所のサイクルベースあさひでもらってきた1枚のチラシでした。「ENERSYS U(エナシスユー)」という、あさひのオリジナルブランドです。今日まで三段ギアの普通の自転車に乗ってきた親が、電動アシストに乗り換えようかと考えているところです。
結論から言うと、電動アシスト自転車選びで最初に見るべきなのは、車種のスペックではありません。「自分の家の近くに、どのメーカーを扱っているお店があるか」です。理由は本文でくわしく説明しますが、これを飛ばして車種だけ比べると、あとで直せなくなる場面が出てきます。
ぼくは実際に何十本もの資料を読み、あさひの公式ページ、チラシの原文、パナソニック・ヤマハ・ブリヂストンの公式ページ、警察庁や交通事故総合分析センターの資料まで、できる範囲で一次情報にあたって調べました。この記事は、その結果をもとに「買う前に迷っている人」に向けて書いています。
まずは結論。高齢者に電動アシスト自転車をおすすめするなら、車種より先に近くの店を見る
「電動アシスト自転車 高齢者 おすすめ」で検索すると、たいてい車種の比較記事が出てきます。もちろん車種選びも大事なのですが、あさひの公式サイトを読んでいて、見過ごせない告知を見つけました。あさひは「修理ができない自転車」の一覧をページに掲げていて、その中に次の項目があります。
当社取扱なしメーカーの電動アシスト自転車における、電機系部品に関わる修理
(出典:サイクルベースあさひ公式サイト「修理ができない自転車(その他車両等)について」、2024年4月3日付のお知らせ)
あさひはこの一覧の冒頭で「該当する車両、運搬器具等、その他遊具についての販売・修理はお断りさせていただいております」としています。つまり、近所の自転車屋さんがあさひしか無い場合、あさひで扱っていないメーカーの電動アシスト自転車を通販で買ってしまうと、モーターやバッテリーが壊れたときに「近所で直してもらえない」という事態が起こり得ます。逆に、近所に大手メーカーを扱うお店があるなら、話はまったく変わってきます。
この記事は、この「どこで買うか」を軸に、車種のおすすめ順位もあわせて紹介します。
この記事の読み方
- 近所にあさひしかない人 → ENERSYS シリーズの中でどれを選ぶかを先に読んでください
- 近所に大手メーカーを扱う自転車店がある人 → 「通販の安い電動アシスト自転車との違い」の章まで含めて読んでください
- 親に買ってあげようとしている人 → 「店頭で必ず確かめる3つのこと」をそのまま持って行ってください
実家の親が持ち帰ったチラシから始まった話
親は身長165cmぐらい・普通体型で、本人いわく「元気です」とのこと。今日まで三段ギアの普通の自転車に乗っていて、1日4kmぐらい、坂道はほとんど無い土地に住んでいます。近所にサイクルベースあさひの店舗があり、そこでチラシをもらってきました。
チラシに書いてあったのは、こんな内容です。
- 26型・24型の2サイズ、変速なし
- 本体価格 税込119,900円
- 1充電あたり約57km、充電時間は約5〜6時間
- ドライブユニットの名称は「PLUS-D」
- ドライブユニットとバッテリーに5年間保証(対象は2026年3月21日以降の購入分)
- BAAマーク付き
親のことなので、正直に言うとまだ結論は出ていません。ですが「知りたくなることは全部調べよう」と思い、あさひの公式ページ、パナソニック・ヤマハ・ブリヂストンの公式ページ、価格.comのクチコミ、楽天のレビュー、警察庁や国民生活センターの資料まで、できる限り原文で読みました。この記事は、その調べた内容をまとめたものです。
サイクルベースあさひで比べる、おすすめの順位
まず、あさひのENERSYSシリーズと、価格帯の近い大手3社のモデルを並べて比べます。ここでの前提は「26型・坂道はほとんど無い・普通体型で元気な人が、普通の自転車から乗り換える」という条件です。坂道が多い土地や体力に不安がある場合は、順位が変わってくることを先にお伝えしておきます。
価格は2026年9月時点の各社公式・価格.com掲載の実勢価格(税込)。ENERSYS Uは店頭価格とネット最安値の両方を、パナソニック・ブリヂストンは価格.com掲載店の実勢最安値を掲載。同一条件での比較ではないため、購入前に最新の価格を確認してください。変速の内装/外装は、ビビ・Lはパナソニック公式、ビビ・L・押し歩きはパナソニック公式、アシスタU STDは価格.com掲載の商品説明で確認しました。電池容量(アシスタU STDがENERSYS Uの6割ほど)は、2026年9月11日に価格.com掲載の商品説明とあさひ公式サイトで確認しました。
1位と2位は僅差。決め手は「変速」
1位に置いたENERSYS everyは、ENERSYS U とほぼ同じ車体・同じお店・同じ5年保証でありながら、内装3段変速が付いていて、しかも1万1千円安いです。今日まで三段ギアの自転車に乗ってきた人がENERSYS Uに乗り換えると、変速という機能がひとつ減ることになります。バッテリーが切れたときも、everyなら軽いギアに落とせますが、ENERSYS Uは1速固定のまま24.8kgを漕ぐことになります。(everyは楽天市場の商品ページが見当たらなかったため、上のリンクはあさひ公式ページです)
ただし、everyはENERSYS Uより1.2kg重いです(26.0kg対24.8kg)。この差は、普通体型で元気な人にとっては小さいと考えていますが、決め打ちにはしません。重さは、店頭で実際にまたいで、押して確かめるのがいちばん確実です。両方を並べて試せるなら、それで1位と2位が入れ替わることも十分あります。
3位以下は、車種としては悪くない。ただし「どこで買うか」が別に効いてくる
パナソニック ビビ・Lは、候補の中でいちばん軽く(22.7kg)、変速もあります。車種だけ見れば、ENERSYS Uより条件に合う場面も多いはずです。ただし、これは通販で買う前提のスペックです。近所にパナソニックを扱うお店が無い場合、この記事の冒頭で触れた「あさひは他社製の電気系統を直さない」という告知が効いてきます。近所の自転車屋さんがどこを扱っているかで、この順位は入れ替わります。
車種を選ぶ前に、もうひとつ一緒にそろえておきたいものがあります。ヘルメットです。理由は後の章でくわしく説明しますが、車種選びより先に、着ける習慣のほうを決めてしまうくらいでちょうどいいと考えています。
5年保証は魅力。ただし光と影がある
チラシで目を引くのが「ドライブユニット・バッテリー 5年間保証」です。大手3社の標準保証は、バッテリーが2年(登録すれば3年、ブリヂストンは特定の機種のみ登録で5年)、ドライブユニットは3年です(2026年9月11日、パナソニック・ヤマハ・ブリヂストン各社公式サイトで確認)。バッテリーで見ればあさひが2〜3年長く、ドライブユニットで見ても2年長いことになります。ただし、調べていくと気になる点も出てきました。
大手は「何%まで劣化したら保証」を数字で公表している
パナソニックとヤマハは、バッテリー保証の基準をこう明記しています。
出典:あさひ公式サイト(ENERSYS Uページ、2026年9月14日確認)およびあさひ ENERSYS Uチラシ(EN2026-2)、パナソニック・ヤマハ各社公式サイト(2026年9月11日確認。保証年数・劣化基準は各社公式サイトの画像表記を直接判読して確認)。
あさひは「5年間」という年数こそ大手より長いのですが、何%まで容量が落ちたら対象になるのかが分かりません。しかも同じチラシには「バッテリー寿命は充放電700〜900回で新品時の約60%に低下」とも書かれています。この60%という数字が、保証の対象になる基準なのか、対象外になる基準なのかが、チラシだけでは読み取れませんでした。
年数の長さだけを見て「あさひが得」と決めつけるのは早いと思います。この条件は品質保証書の現物を店頭で見せてもらわないと分からないので、あとの章でまとめる「店頭で確かめること」に入れました。
それでも、あさひの5年保証には意味がある
条件が見えないという弱点はありますが、5年間という年数自体、大手より長いのは事実です。加えて、購入特典として「バッテリー盗難時30%オフ」「バッテリー購入30%オフ(5年以内に1回)」「タイヤチューブ交換工賃2年間2回まで無料」の3つが付いています。とくにタイヤチューブ交換の無料は、日常的に発生しやすいメンテナンスなので、確実に効いてくる特典だと思います。
変速なしという割り切り、良いのか悪いのか
ENERSYS Uは変速機を持ちません。あさひはこれを「変速の切替操作も不要」「乗ったら『オン』のワンボタン設計」という長所として売り出しています。
操作が減る、というメリット
変速というのは、慣れていないとタイミングを誤ってチェーンが外れたり、坂の途中で変速して負荷が急に変わったりすることがあります。この操作そのものが無くなるのは、機械が苦手な人にとっては安心材料になります。実際、あさひの修理料金表を見ると、変速レバーの交換やケーブル交換、内装・外装の変速調整といった項目が並んでいて、変速機はそれなりに手間のかかる部品だと分かります。
バッテリーが切れたときの重さ
一方で、変速が無いということは、坂道や向かい風でギアを軽くする逃げ道が無いということでもあります。とくに気になるのが、バッテリーが切れた場面です。ENERSYS Uは変速が無いので、バッテリー切れ・充電忘れ・故障のいずれでも「1速固定の24.8kgの自転車」になります。1位に挙げたeveryなら、この場面でギアを軽くできます。
楽天市場で24型を扱う複数の出品店のレビューを確認しました。あさひ楽天市場店(サイクルベースあさひ自身が運営する店舗)の24型商品ページには、購入者レビューで「アシスト力は思っていたより弱いかも」という声がありました(2026年4月29日投稿・2026年9月時点で確認)。また、別の出品店「プロヴォカティオ」の24型商品ページには、購入者レビューで「少し重く感じることがあるのですが、道路のせいなのか、自転車のせいなのかわかりません」という声もありました(2026年4月25日投稿・2026年9月時点で確認)。件数はごく少なく、これだけで壊れやすさや性能を判断することはできませんが、坂道が多い土地に住んでいる場合は、この2つの声も参考にしてほしいと思います。実家の親の場合は坂道がほとんど無いので、この点の影響は小さいと考えています。
あさひという「店」の強み
車体そのものの性能とは別に、あさひという店を使えることには、いくつか実際に使えそうな特典がありました。
サイクルメイトと免許返納割引
- サイクルメイト(加入料税込3,630円):3年間、全国のあさひ店舗で無料点検が受けられます。盗難補償もあり、電動アシスト自転車の場合、盗まれても自己負担は税込23,980円ほどで新車と交換してもらえます
- 運転免許証の自主返納者への割引:65歳以上で運転経歴証明書を提示すると、税込5,500円引き(店頭購入のみ・オンラインショップは対象外)
- サイクルポーター:壊れて動かせなくなった自転車を自宅まで引き取りに来て、修理後に届けてくれる出張サービス(対応エリアや料金は、店舗で直接確認するのが確実です)
これらは車体の差ではなく、あさひという店の仕組みの差です。近所に店舗があるという条件がそろっているなら、修理・点検・バッテリー交換の窓口が明確になっているのは、実際に効いてくる安心材料だと思います。
BAAマークと事故データで気をつけたいこと
チラシには「あさひの電動アシスト自転車はすべてBAAマーク付き」と書かれています。このマークが何を保証しているのか、公式の説明を読んで調べました。
BAAマークは「安全」の証明ではなく、物の作りの目印
BAAマークは一般社団法人自転車協会が定めた業界の自主基準です。ブレーキの制動性能やフレームの強度など、約90項目の検査項目があります。ここまでは、チラシの説明どおりでした。
ただし、調べていくと、この「約90項目」の検査のうち、代表車種1台についての最初の検査(型式検査)は、製造・輸入事業者自身が行うと、BAA協会自身の公式サイトに書かれていました(一般社団法人自転車協会「BAAマークについて」)。第三者が全数を検査しているわけではありません。市場に出たあとの抜き取り検査(商品検査)は、自転車協会が毎年、無作為にBAAマーク付きの自転車を購入し、公的検査機関に委託して安全基準への適合を検査しています(一般社団法人自転車協会「よくあるご質問」、2026年9月確認)。
つまり、BAAマークは「フレームやブレーキが一定の物理基準を満たしている」ことと「製造・輸入事業者名の表示」「製造物責任保険への加入」「専門の資格者による組立」を示す目印であって、「事故に遭わない」「安全に乗れる」ことまで保証するものではありません。BAAが付いているから安全、とは言えないと考えています。
気をつけたいのは「近所の交差点」と「頭部」
交通事故総合分析センター(ITARDA)の資料を読むと、75歳以上の自転車での出会い頭事故は、自宅から500m以内、信号機の無い交差点に集中していることが分かりました。「1日4kmぐらいの、坂道もほとんど無い近所の移動だから安全」とは言えず、むしろ毎日通る慣れた道こそ、気の緩みが出やすいということだと思います。
対策として資料が挙げているのは、次のようなことでした。
- 見通しの悪い交差点では、いったん自転車を降りて安全確認する
- 日中でもライトを点けて、車から見えやすくする
- 家族と一緒に、普段よく通る道の危険な場所を点検する
もうひとつ、頭部の保護についても資料に数字がありました。自転車事故の死者のうち頭部が最大の損傷部位だった割合は約6割で、ヘルメット非着用時の死亡割合は、着用時のおよそ2.7倍という数字が出ています(出典:ITARDA「イタルダインフォメーション No.144」2023年)。チラシにも「ヘルメットをかぶりましょう」という帯が入っていました。車種選びよりも、ヘルメットをかぶるかどうかのほうが、致命的な結果を避ける効果が大きい可能性があると感じています。
通販の安い電動アシスト自転車、何が違うか
「あさひも大手も高い」と感じる場合、楽天やAmazonにはもっと安い電動アシスト自転車が並んでいます。実際にランキング上位の商品をいくつか調べ、ENERSYS Uと同じ項目で比べてみました。
安いぶん、確認できる材料が少ない
調べた通販ブランドの多くは、バッテリー容量や走行距離がENERSYS Uの半分前後で、価格もほぼ半額という、容量と価格が対応する組み合わせが目立ちました。中には車体が軽い、適応身長の範囲が広いなど、数字だけ見るとENERSYS Uを上回る銘柄もあります。「安いから悪い」と単純に決めつけられる材料は、今回の調査では見つかりませんでした。
ただし、はっきり違ったのがBAAマークの有無です。調べた通販ブランドはいずれもBAAマークの記載が見当たりませんでした。BAAが無いから危険というわけではありませんが、購入前に自分で確認できる安心材料の量は、あさひや一部の大手ブランドより明らかに少ないです。修理についても、多くは出品店への郵送が前提とみられ、近所に持ち込める窓口が最初から無いことが多いようです。
過去に基準を満たさなかった例があることも、知っておきたい
電動アシスト自転車には、道路交通法で「時速10km未満ではペダルの力の最大2倍まで、時速24kmでアシストが0になる」という基準があります。この基準を満たさない製品は「電動アシスト自転車」ではなく別の乗り物として扱われ、公道を自転車として通行できません。
調べる中で、過去に、この基準を満たさない電動アシスト自転車が公的機関によって公表された例があることが分かりました(国民生活センターの調査、2017年公表)。今から9年以上前の、特定の1製品についての話であり、現在も同じ事業者・同じ製品が基準を満たしていないという意味ではありません。それでも、通販で安い電動アシスト自転車を選ぶときは、こうした事例があったことを知ったうえで、型式認定を受けているかどうかを商品ページで確認してから買うことをおすすめします。
店頭で必ず確かめる3つのこと
ここまで調べてきて、ウェブだけではどうしても分からなかったことがいくつもありました。ほとんどは、店に行けば1分で分かることです。近所にあさひがあるなら、次の3つは必ず聞いてみてください。
1. 保証書を見せてもらい、劣化の基準を聞く
「5年保証って書いてありますが、保証書を見せてもらえますか。バッテリーがどれくらい弱ったら保証で直してもらえるんですか?」とそのまま聞いてみてください。答えが「分からない」「書いていない」であれば、それも大事な情報としてメモしておく価値があります。
2. 部品を何年ぐらい用意してもらえるか聞く
「この自転車が古くなって、バッテリーやモーターの部品が要るとき、何年ぐらい先まで部品を用意してもらえますか?」。パナソニックとヤマハは、どちらも「生産終了から8年間、補修用部品を保有する」と自社サイトに明記しています(2026年9月11日確認)。あさひについては、同じことを書いたページが見つかりませんでした(2026年9月11日時点。あさひが保有していないという意味ではなく、公表箇所を見つけられなかったという調査の限界です)。
3. またいで、押して、できれば少し乗ってみる
サドルを一番低い位置にしてもらい、両足の裏がしっかり地面につくか確かめてください。電源を切った状態で、車体を押して10mほど歩いてみてください。可能であれば、平地と坂の両方で少し試乗させてもらうのもおすすめです。ウェブでは「またぎやすいフレーム」としか分からず、実際に足がつくか・押して歩けるかは、体格や体力の個人差が大きいので、カタログの数字より、この場でやってみた感覚のほうが正しい判断材料になります。
順位の表で3位に挙げたパナソニック ビビ・Lは、候補の中でいちばん軽く、変速も残せる車種です。近所に取扱店があるなら、店頭で試すときの比較対象として商品情報を載せておきます。
まとめ。うちはどれを、どこで買うか
調べてきた結果を、うちの場合にあてはめるとこうなります。
- 近所にあさひの店舗がある → まずENERSYS everyとENERSYS Uを両方またいで、押して比べる
- 変速が残る安心を取るなら → ENERSYS every
- 操作の単純さと軽さを取るなら → ENERSYS U
- いずれを選んでも → 保証書の中身と部品供給の年数は、店頭で必ず聞く
ぼくの親については、まだ結論を出していません。次に店に行くときは、この記事に書いた3つの質問を持って行って、実際に答えを聞いてこようと思います。答えが出たら、また追記します。
電動アシスト自転車は、車種の比較だけでなく「近くにどんな店があるか」まで含めて考えると、選び方がだいぶ変わってきます。この記事が、同じように迷っている人の判断材料の一つになればと思います。
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