YouTube動画のURLをGeminiに投げて文字起こしをしたことがある方へ。もう一回同じことをやると、別のものが出てきますよね。今回、その差が123箇所ありました。ぼくは、同じ場所を2回文字起こしさせて見比べられる道具「ドウガオコシ v1.0」を作ったので、その差を数えられました。
きっかけは、前にKEITOさんの動画を使った記事を書いたときのことでした。動画はもちろん見ています。ただ、記事を書くときに文字として手元に置いたのは、ぼくが自分用に作ったGEM(Geminiを目的別に仕立てたもの)が起こしてくれた文字起こしでした。29分の動画を何度も巻き戻すより、文字で追ったほうが早いからです。ところがその文字起こしには「聞き取れませんでした」という印が付いた言葉がいくつかあって、書きながら「ここ、本当に合ってるのかな」とふと思ったんです。KEITOさんの動画は、以前にも別の記事で素材にさせてもらったことがあります。日本語以外の動画も記事のネタにできたら幅が広がる、とも思いました。それで、動画や手元の音声・動画ファイルを渡すと文字起こしをしてくれる道具を、Claude Codeという仕組みを動かしている開発担当の係に頼んで作ってもらいました。今回はその道具を作って、実際に使ってみた話です。

登場するのは3つです。Geminiのチャット、GEM、そしてドウガオコシ v1.0
この記事には、紛らわしいものが3つ出てきます。読み進める前に、先に整理しておきます。
1つ目は、GeminiのチャットにYouTubeの動画URLをそのまま貼る、誰でも無料でできるやり方です。貼るだけで文字起こしが返ってきます。ぼくが試した範囲では、だいたい1回で終わりました。何度も試したわけではないので言い切れませんが、気になるのはまさにそこです。29分の動画でも短い文字起こしが1回返ってきて終わり、というのは、丸ごと書き起こしたというより要約に近いのではないか。動画が長いほど、この不安は大きくなります。このやり方には、「動画の18分00秒から18分40秒まで」のように時間帯を指定する機能もありません。
2つ目は、GEMです。GEMは、Geminiを特定の目的向けに仕立て直したもので、作っている人と作っていない人がいます。ぼくは文字起こし専用に仕立てたGEMを自分で持っていて、前回の記事の素材は、このGEMに書き起こしてもらったものでした。こちらは1回では終わりません。途中でいったん止まり、「つづき」と投げると残りが出てきます。3分割と言われたのに2回で終わることもあれば、もっと続くこともあります。手間はかかりますが、そのぶん長く取れるので、チャットにURLを貼るだけよりは安心できました。それでも、取れた文字起こしが本当に合っているかどうかは分かりません。その不安が残ったので、3つ目を作ってもらうことにしました。
3つ目が、今回の主役です。ぼくは、GeminiのAPI(プログラムから直接Geminiを呼び出す入口)を使って、動画や音声ファイルを渡すと文字起こしをしてくれる道具を、開発担当の係に頼んで作ってもらいました。名前は「ドウガオコシ v1.0」です。チャットと違ってAPIを直接使うので、「動画の18分00秒から18分40秒まで」のように時間帯を指定できます。これが、チャットにはできない、今回いちばん大事な違いです。以下、この記事で単に「道具」とだけ書いてあるときは、すべてドウガオコシ v1.0のことです。
ドウガオコシには、同じ区間を2回取って食い違いを見せてくれるオプションも付けてもらっています。せっかく作るなら、1回の結果を信じていいのかどうかも一緒に確かめたかったからです。
ちなみに、動画からではなく最初から自分の声を録音して文字にしたい方(打ち合わせやインタビューが多い方など)には、録音から要約まで一台でこなす市販のAIボイスレコーダーという選択肢もあります。
ドウガオコシ v1.0 の中身
山場の前に、道具そのものの中身も書いておきます。
- 名前とバージョン:ドウガオコシ v1.0
- 何で書かれているか:Node.js(プログラミング言語のJavaScriptを、ブラウザではなくパソコンの中で動かす仕組み)だけで書かれています。外部の部品は1つも使っていません。
- どこで動いているか:ぼくのパソコンの中ではありません。Claude Codeがクラウドに用意している作業用のコンピューター(CPU4つ・メモリ15GB)の中で動いています。ブラウザは画面を映しているだけで、計算はしていません。だから画面を閉じても処理は進みます。
- どう動かすか:黒い画面(コマンドプロンプト)にコマンドを1行打つだけです。動画のURLか、手元の音声・動画ファイルを渡します。
- 中で何をしているか:GeminiのAPIに動画を渡して、文字起こしを受け取っています。長い動画は自動で3分ずつに区切って順番に投げ、つなぎ合わせています。Geminiが一度に返せる文章の量には限りがあり、30分ぶんを一息では返しきれないためです。区切りもつなぎも道具の中でやってくれるので、使う側はコマンドを1回打つだけで、全文がまとまって出てきます。
- 自分で自分を確かめる仕組み:72件の自己テスト(道具が壊れていないかを、道具自身が自動で点検する仕組み)が付いています。
- 実測:30分の動画1本で、Geminiへの呼び出し10回、概算で約36.6円でした。
ここで1つ、はっきりさせておきます。Node.jsで書かれているのは、ドウガオコシという道具そのものだけです。音を聞いて文字にするという、いちばん重い仕事はしていません。それはGoogleのサーバーの中でGeminiがやっています。ドウガオコシがやっているのは、動画を3分ずつに区切る、Geminiに投げる、返ってきた文字をつなぐ、使った量を数える。この4つだけです。
だから約36.6円は、パソコンの電気代でもクラウドの使用料でもなく、全部Geminiの利用料です。Geminiは「トークン」という単位で料金がかかります。動画を読ませる分が100万トークンあたり0.75ドル、文字を書き出す分が100万トークンあたり3.75ドル(Google公式ページの参考値。1ドル150円で計算しています)。動画は1秒あたり90トークンほど使うので、30分の動画だと読ませるだけで16万トークンほどになります。ざっくり半分が動画を読ませる分、半分が文字を書き出す分、という内訳です。ただし実際に測ったのは合計の約36.6円と呼び出し10回で、この半分ずつという内訳は単価から逆算した見当です。
ちなみに、ドウガオコシは開発担当の係にコードで作ってもらいましたが、Googleが無料で用意している「AI Studio」という画面を使うと、コードを書かずにGeminiへの指示や設定を試すこともできます。自分でも似たような仕組みを触ってみたい方向けに、関連する本を1冊置いておきます。
30分の動画をまるごと1本、通しでドウガオコシに文字起こしさせてみました
まずは基本の動作確認です。KEITOさんの同じ動画(29分ほど)を、頭から終わりまでドウガオコシで通しで文字起こしさせてみました。区間ごとにGeminiを呼び出す形になり、合計10回の呼び出しで、費用は概算で約36.6円でした(円換算の単価は目安で、実際の請求額と完全に一致するかまでは確認していません)。つなげて読んでみると、区間の境目をまたいでも話が途切れておらず、抜け落ちている場所も見当たりませんでした。まずは一安心です。
英語の動画も、原文と日本語訳を並べて取れます
ドウガオコシには、英語の動画でも原文と日本語訳を並べて出せる機能も付けてもらいました。もともと「英語の動画も記事のネタにしたい」という思いつきから足してもらった機能です。ドウガオコシを作る前の調査の段階で、公開されている原稿と答え合わせできる英語の演説動画(フランクリン・ルーズベルト大統領の演説)を使って試したことがあります。90秒ぶんを英語のまま、それから英日対訳でも取ってみたところ、原稿と突き合わせられた文はどちらも実質一致していました(1回の試行では単語が1つだけ抜けていました)。英語の動画でも、同じくらいの精度は期待できそうです。
同じ場所をドウガオコシで2回取ったら、123箇所も食い違いました
ここからが今回いちばん書きたかったところです。同じ動画の同じ区間を、ドウガオコシに2回続けて文字起こしさせてみました。18分00秒〜18分40秒のごく短い区間では、食い違いは4箇所だけで、しかも「ウェブ」と「Web」、読点の有無といった、細かい表記のゆれにとどまりました。
ところが24分00秒〜27分40秒の区間を同じように2回取ったところ、食い違いは123箇所に増えました。同じドウガオコシ、同じ音声、同じ設定で、です。この「123箇所」は、文字を1文字ずつ突き合わせて数えた結果で、実際にはそのほとんどが読点・スペース・改行の位置といった細かい表記のゆれです。ただし、その中に、意味そのものが変わってしまう場面が1か所(文字単位では20箇所あまり)混ざっていました。
画面の文字をそのまま書くか、話し言葉として要約するか
いちばん驚いたのは、動画の中で画面に文字(テロップのような図解)が表示されている場面でした。ドウガオコシが1回目に書き起こした結果はこうでした。
テキストを1本の解説動画に変えるスキル、zukai-kaisetsu 資料でも文字起こしでも、渡せば入口になります 出てくるのはMP4が1本、尺は60〜180秒が目安 画面は3つの層で組み立てます 土台はSeedance 2.5のリアル映像を全画面で流す……
ところが、まったく同じ場所を、ドウガオコシが2回目に書き起こした結果はこうでした。
はい、こんな感じのですね、HTMLで作られた図解の動画ですね。
1回目は画面に出ている文字をそのまま逐語で書き写し、2回目はまったく同じ場所を、話し言葉の要約として書いています。テロップを読んだのか、音声のほうを要約したのか、どちらが起きたのかは正直ぼくにも分かりません。分かるのは、同じドウガオコシ・同じ区間・同じ回の実行の中で、これだけ違う書き方になることがある、という事実だけです。
ドウガオコシの聞き取りがゆれた箇所もありました。6分35秒〜7分15秒の区間では24箇所の食い違いがあり、同じ発言をドウガオコシが1回目は「私に場合は」、2回目は「私の場合は」と書き起こしたり、「一箇前」と書いた回と「1個前」と書いた回があったりと、聞き取り自体が回によってゆれている様子が見えました。
それでも役に立ったこと。GEMが「わからない」とした言葉
ここまで読むと「じゃあ使い物にならないのでは」と思われるかもしれませんが、そうとも言い切れません。前回の記事の素材にしたGEMの文字起こしで「要確認」がついていた言葉を、ドウガオコシにも同じ動画で2回取らせてみたところ、表記が完全に一致した言葉が4つありました。もう1つ、URLらしき文字列も読み取れましたが、こちらは実在を確かめられなかったので、表には載せていません。
| GEMが「要確認」とした言葉 | ドウガオコシの結果(2回とも一致) |
|---|---|
| バーセル | Vercel |
| fix fieldジェネレート | higgsfield-generate |
| シーダンス/Cダンス | Seedance 2.5 |
| ヘイジェン/ヘイ | HeyGen |
ただし、これが正解だと言い切ることはできません。実在するかどうかの裏付けは検索結果の要約だけで確認したもので、それぞれの公式サイト(Vercel、HeyGen)の原文までは読めていません。とくに「Seedance 2.5」は、検索で見つかったのは「Seedance 2.0」の情報が中心で、バージョン番号が合っているかまでは分かりませんでした。GEMとドウガオコシが、たまたま同じ勘違いを共有している可能性も消せません。
「YouTubeの字幕を読んでいるだけじゃないの?」も確かめました
もう1つ、気になっていたことがあります。ドウガオコシ、実はYouTubeの字幕をそのまま読んでいるだけなんじゃないの、という疑いです。
試しに、字幕が付いていない音声ファイル(著作権の心配がないパブリックドメインの音源)をドウガオコシに渡してみたところ、ちゃんと文字起こしができました。字幕が無いのに文字が出てくるということは、少なくとも字幕だけに頼ってはいないはずです。それから、無名の動画の同じ箇所を取り直してみると、結果が変わることも確認しました。もし固定された字幕を読んでいるだけなら、何度取っても同じ結果になるはずなので、これも音声そのものを処理している傍証になります。ただし、この仕組みについて調べてみたのですが、Google公式の説明までは見つけられませんでした。
ちなみに、AIの音声認識や文字起こしの仕組みをもっと詳しく知りたくなった方向けに、関連する本を1冊置いておきます。
まとめ:文字起こしは1回で信じないことにしました
今回はっきりしたのは、Geminiで文字起こしをした結果を、1回取っただけで正しいと思い込むのは危ないということです。とくに、画面に文字が出ている場面や、固有名詞・数字が出てくる場面は要注意でした。ぼく自身、次にドウガオコシを使うときは、記事の柱になりそうな固有名詞や数字が出てくる区間だけでも、必ず2回取って見比べるようにしようと思います。
文字起こしができた後、内容を整理したり、気になった箇所についてAIに質問しながら調べたりしたい方には、NotebookLMというGoogleの道具もあります。使い方をまとめた本を1冊置いておきます。
ドウガオコシが無くても、やれることはあります。Geminiのチャットに、同じ動画のURLをもう一度貼って、2回目の書き起こしを取ってみてください。全文を見比べる必要はなく、記事の柱になりそうな固有名詞と数字だけ、1回目と2回目で同じ表記になっているかを見比べるだけで十分です。動画をネタに何か書く方は、1回の文字起こしを鵜呑みにせず、大事なところだけでも2回取って見比べることをおすすめします。




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