低く鋭い造形、3.5:1の超速ギア、そして“両軸三部作”の掉尾(ちょうび)を飾る新シャーシ「ME」。海外情報を追いかけて胸の高鳴りを抑えてきたぼくにとって、日本のタミヤ公式ページにライザン(MEシャーシ/ITEM 18663)がついに掲載されたことは、特別な瞬間でした。これまで点と点でしかなかった情報が、公式の言葉によって一つの線として結ばれ、その輪郭がはっきりと見えてきたのです。この感覚は、パーツリストを眺めながら頭の中でマシンを組み上げる、あの瞬間の興奮によく似ています。この記事では、日本語で開示された確定情報を軸に、これまでの自分の検証ログ(4:1×大径の異常な伸び、外径調整の重要性、電装なしの“光って見える”演出など)と絡めながら、2026年1月の発売日に向けた“仕込み”の思考を丁寧に言語化していきます。これは単なる新製品レビューではありません。事実と推測を慎重に切り分け、一台のマシンと真摯に向き合うための、ぼくなりの設計図です。
ライザンが日本公式に掲載——“待ってた”が“始まった”に変わる瞬間
これまで海外の香港TAMIYA情報などで断片的にその姿を見ては、期待に胸を膨らませてきました。しかし、やはり母国語である日本語で、タミヤ公式サイトにその名が刻まれるのを見ると、感慨もひとしおです。製品名、シャーシのコンセプト、ギア比、サイズ感、そしてデザインに込められた意図まで、一つひとつの言葉がすっと心に入ってきます。ここからはもう、憶測で語るフェーズではありません。確定した仕様という盤上で、ぼくたちは次の戦略を練り始めるのです。
核心は「3.5:1(超速)× ローハイト小径」の標準設定
まず注目すべきは、駆動系の基本骨格です。ライザンのMEシャーシは、標準で3.5:1の超速ギアを搭載しています。これは、MSシャーシキットに付属する4:1(ハイスピードギア)よりも、より減速比が小さく、最高速寄りのセッティングであることを意味します。モーターの回転を、よりダイレクトにタイヤの回転に伝えようという意思の表れですね。
そして、その相棒として組み合わされるのが小径のローハイトタイヤ。タミヤの公式サイトでも「低いシルエット」と表現されている通り、この組み合わせは現代ミニ四駆のセッティングの王道とも言えます。ハイギヤードな設定はトップスピードの伸びに貢献しますが、一方で加速力やトルクは犠牲になりがちです。そこでタイヤの外径を小さくすることで、加速性能を補い、かつマシン全体の重心を下げて走行安定性を確保する。この「超速ギア × 小径タイヤ」というパッケージは、パワーと安定性を高い次元で両立させようという、極めて理にかなった設計思想の表れだと、ぼくは解釈しています。まずはこのキット標準の組み合わせで走り込み、駆動系の抵抗を徹底的に減らした上で、コースレイアウトに合わせた微調整を加えていくのが、MEシャーシを理解する上での最短ルートになりそうです。

“両軸三部作”の完成形としてのMEシャーシ
ミニ四駆PROシリーズの登場は、センターモーターによる両軸駆動という革命をもたらしました。その歴史は、分割式で拡張性の高いMSシャーシに始まり、一体型構造で剛性と駆動効率を追求したMAシャーシへと受け継がれてきました。そして今回登場するMEシャーシは、その流れの先に位置する、一つの完成形と言えるのかもしれません。

僕たち、今はARシャーシとMSシャーシしか持ってないのですー
タミヤ公式サイトのMEシャーシ解説ページを読むと、その設計思想がより深く理解できます。軽量・コンパクトでありながら、モーター固定部の剛性は高く保ち、駆動ロスを抑制。駆動部分の軸受けには、最近のレースシーンで評価の高いVZシャーシと同じ、摩擦の少ない樹脂製のパーツ(ブッシュ)が採用されています。これによって、パワーが無駄なく伝わる、スムーズな回転が期待できるんです。さらに、適度な剛性とフレックスな組合せによる“しなやかな走り”は非常に興味深いですね。ガチガチに固めるのではなく、シャーシ全体が適度にしなることで路面を捉え、安定した走行を生み出すという考え方。この「しなやかさ」と「剛性」の両立という考え方は、トップレーサーたちが「MSフレキ」などの改造で追求してきた、現代レースシーンのトレンドそのものです。着地の衝撃をシャーシの”しなり”で吸収し、安定性を高めるというアプローチを、メーカー自身がシャーシの基本設計に盛り込んできた。これは非常に画期的なことだと思います。着脱式の前後バンパーも、セッティングの自由度を高めるだけでなく、ディスプレイモデルとしての美しさにも貢献する素晴らしいギミックだと感じます。
デザインは根津孝太氏。「刀」の系譜を受け継ぐ造形美
ライザンのデザインを手掛けたのは、これまでにも数々の名車を生み出してきたznug designの根津孝太氏。その名を聞いて、多くのファンがピンと来たはずです。そう、このマシンは「ライキリ」から始まる“刀”の系譜を受け継ぐ一台なのです。その名は日本神話に登場する剣に由来するとのこと。低くワイドなフォルム、空気を切り裂くようなシャープなエッジ、そして翼のように広がるフェンダー。随所にこれまでの根津氏デザインのエッセンスを感じさせながらも、ライザンはまた新しい境地を見せてくれています。
特に印象的なのは、オープントップのコクピット周りからリアへと流れるボディラインの美しさです。別売りのフィギュアを乗せることも可能とのことで、走らせるだけでなく、飾って楽しむというミニ四駆のもう一つの魅力を強く意識したデザインと言えるでしょう。以前、未来的なデザインの「エレグリッター」に映画『トロン』の世界観を感じて心を躍らせました(最近、リメイクなのか新しい映画「トロン」をやるみたいですね。CMみた。)が、ライザンはまた違うベクトル、すなわち和の様式美と現代的なレーシングマシンの機能美が融合した、唯一無二のオーラを放っています。このマシンがコースを疾走する姿を想像するだけで、今からワクワクが止まりません。
ぼくの過去ログがMEシャーシの“解”を導く – 実走データとの照合

新しいシャーシが登場したとき、ぼくがいつも行うのは、これまでの自分の走行データやブログ記事と照らし合わせることです。机上の空論ではなく、実際に手を動かし、コースで試行錯誤してきた経験こそが、新しいマシンを理解するための最も信頼できる羅針盤になります。ここでは、過去のぼくのブログ記事を振り返りながら、MEシャーシを攻略するためのヒントを探っていきます。
4:1×大径の“じゃじゃ馬な速さ”と、3.5:1×小径の“インテリジェントな速さ”
以前、ぼくのブログで4:1のハイスピードギアに大径ホイールを組み合わせたマシンの検証を行いました。その時の直線の伸びは、まさに「異常」と表現するほかない凄まじさでした。これは「実効ギア比」という考え方で説明できます。ギア比の数値が同じでも、タイヤの外径が大きければ大きいほど、タイヤが一回転した時に進む距離は長くなる。つまり、実質的によりハイギヤードな状態になるわけです。
しかし、その圧倒的な最高速と引き換えに、加速の鈍さ、コーナーでの再加速のもたつき、そして高重心化による安定性の低下という大きなデメリットも抱えていました。一方、ライザンが標準とする「3.5:1 × 小径」は、この逆のアプローチです。実効ギア比としては、4:1×大径よりも加速寄りのマイルドな設定になりますが、その分、立ち上がりの鋭さと低重心による安定性を手に入れることができます。これは、現代の複雑な立体コースを攻略する上で、非常に大きな武器になるはずです。直線番長的な“じゃじゃ馬な速さ”ではなく、コース全体をクレバーに走り抜ける“インテリジェントな速さ”。それがMEシャーシの目指すところなのかもしれません。
「飛ばずに速い」は作れる。外径、ブレーキ、重心の三位一体セッティング

ミニ四駆のレース、特に立体コースにおいて永遠のテーマとなるのが「いかにコースアウトせずに速く走るか」です。ぼくはゴールドアバンテのセッティングを詰めていく過程で、その答えの一端が「外径・ブレーキ・重心」の三位一体のバランスにあると結論付けました。タイヤの外径を調整して最高速をコントロールし、ブレーキの当て方を工夫してジャンプの姿勢を整え、全体の重心を低く保って安定性を確保する。この3つの要素が噛み合ったとき、マシンはまるで路面に吸い付くように走り、コースアウトの不安なくアクセル(電圧)を開けていけるようになります。
MEシャーシは、その素性の時点で低重心という大きなアドバンテージを持っています。この特性を最大限に活かせば、超速ギアというハイパワーな設定でありながら、「飛ばずに速い」理想的なマシンを作り上げることは十分に可能だと考えられます。特に、前後で独立した着脱式バンパーは、ブレーキセッティングの自由度を格段に高めてくれるはず。フロントブレーキを強めにかけてジャンプの突入姿勢を抑え、リアは最低限のセッティングで失速を防ぐ、といった細やかな調整がやりやすくなるでしょう。過去の経験が、そのままMEシャーシのセッティングに活かせる。そう思うと、俄然、攻略のイメージが湧いてきます。
ホイール交換は“接地”を変える実験だった – MEへの応用
30周年記念のゴールドメッキホイールに、スリックタイヤを履かせた時のこともよく覚えています。この時ぼくが意識したのは、タイヤの外径をほとんど変えることなく、ホイールの剛性やタイヤのコンパウンド(ゴムの硬さ)、接地面積といった要素だけを変化させることでした。見た目のカッコよさはもちろんですが、これも立派なセッティングの一つです。同じギア比、同じタイヤ径でも、路面を掴む力が変われば、コーナーでの挙動や加速感は大きく変化します。
ライザンはキット標準でゴールドの新規Tスポークホイールとブラックのローハイトタイヤが付属します。まずはこの標準状態で基本性能を把握することが大切ですが、その先には無限の選択肢が広がっています。例えば、よりグリップの高いソフトタイヤを履かせてコーナリング重視にするのか、あえてハードタイヤでグリップを逃がし、直線の伸びを追求するのか。また、ホイールの素材をカーボン強化タイプに変えれば、シャフトとの勘合がきつくなり、駆動ロスを減らすことにも繋がります。MEシャーシという優れたプラットフォームの上で、こうした足回りの細かなセッティングを試していくのは、間違いなく楽しい時間になるでしょう。
ライザンで夢想する。“TRON”の光を宿すカスタムプラン

マシンの性能を追求するのもミニ四駆の醍醐味ですが、同じくらい楽しいのが「自分だけの一台」を作り上げるドレスアップカスタムです。以前、エレグリッターのデザインを見て「トロンに出てくるライトサイクルみたいだ」と盛り上がりましたが、あの近未来的な「光るライン」の表現は、ライザンのシャープなボディにも絶対に似合うはずです。ここでは、レギュレーションと美意識の間で、実現可能なカスタムプランを夢想してみたいと思います。
レースOK!電飾なしで“光って見える”現実的な手法

タミヤの公認競技会では、基本的にLEDなどの電飾パーツの使用は認められていません(※レギュレーションは必ず公式サイトで最新のものを確認してください)。しかし、電飾を使わずに「光って見える」ように演出する方法はいくつか存在します。ぼくが最も現実的で効果的だと考えているのが、再帰反射素材の活用です。
具体的には、3M社の「スコッチライト™」のような、光が当たるとその光源に向かって強く反射するテープを使います。これをカッターで0.5mm〜1mm程度の極細に切り出し、ライザンのボディにあるシャープなエッジやフェンダーの稜線に沿って丁寧に貼り付けていくのです。曲面部分は、テープを短く切り分けながら少しずつ貼っていくのがコツです。そして、その上からクリアブルーやクリアレッドといった透明な塗料を薄く吹き付けます。こうすることで、普段は色のついたラインに見えますが、カメラのフラッシュや照明が当たった瞬間、そのラインだけが白く強烈に輝き、まるでネオンが発光したかのような写真を撮ることができます。これはレギュレーション上も「ステッカーによる装飾」の範囲に収まるため、レースでの使用も問題ありません。
展示用スペシャル!LEDとELワイヤーで実現する本格電飾
レースのことは一旦忘れ、純粋に「カッコよさ」だけを追求するなら、本格的な電飾に挑戦するのも一興です。その場合の選択肢は大きく分けて二つ。一つはチップLEDと導光材を使う方法です。ボディの内側に小さなチップLEDを仕込み、その光を透明なアクリル棒や光ファイバーに流し込むことで、ライン状の柔らかな光を作り出します。エレグリッターのようなキャノピーパーツがあれば、その内側を光らせるのも面白いでしょう。
もう一つは、より「トロン」の世界観に近いELワイヤーを使う方法です。ELワイヤーは、それ自体がネオン管のように均一に光る線状の素材で、柔軟に曲げることができます。これをボディラインに沿わせて接着すれば、まさにライトサイクルそのもの。ただし、ELワイヤーは駆動用のインバーターと電源が別途必要になるため、重量やスペースの確保が課題になります。いずれの方法も、走行性能よりも見た目を重視した展示用のカスタムと割り切るのが賢明ですが、完成した時の満足感は計り知れないものがあるはずです。

本気で配線するなら電池は小さく
もし電飾を施すのであれば、その配線処理は非常に重要になります。走行中の振動で断線したり、電池交換の際に邪魔になったりしないよう、スマートに収めなければなりません。
電源は走行用の単3電池とは別に、ボタン電池(CR2032など)を使った独立電源にすると、電圧の変動がなく光が安定します。配線はシャーシの裏側やボディの内側のリブに沿わせて、ホットボンドなどで数カ所を点付けして固定。スイッチは、ボディの外観を損なわないよう、シャーシのサービスホールなどから指で操作できる位置に隠して配置するのがセオリーです。MEシャーシはMAシャーシよりもコンパクトな設計に見えるので、スペースは限られるかもしれませんが、基本的な考え方は同じはず。過去の経験を活かして、美しく実用的な電飾マシンを仕上げてみたいですね。

ルールの壁を知る – 3.5:1より速いギア比は作れるのか?
セッティングを突き詰めていくと、ふとこんな疑問が頭をよぎることがあります。「タミヤから発売されているギアをうまく組み合わせれば、超速ギアの3.5:1よりもさらに速い(数値の小さい)ギア比を作り出せるのではないか?」と。これは、ミニ四駆の構造に興味を持つ者なら誰もが一度は考えることかもしれません。しかし、この問いに対する答えは、残念ながら明確に「NO」です。
結論:公認レギュレーションでは「不可能」
タミヤが主催するミニ四駆の公認競技会には、使用できるパーツや改造に関する詳細なルール、すなわち「公認競技会規則」が存在します。その中で、ギアに関する項目には「定められた組合せで使用してください」という旨の一文が明記されています。そして、タミヤ公式サイトでは、各シャーシで使用が認められているギア比の組み合わせをまとめた「ギヤ比マッチング表」が公開されています。
この表に記載されていない組み合わせ、例えば異なる種類のギアの歯を無理やり噛み合わせたり、加工したりして独自のギア比を作り出すことは、明確なレギュレーション違反となります。当然、車検を通過することはできません。ミニ四駆は、この定められたルールの中でいかに速さを追求するか、という知的なゲームなのです。自由な発想は大切ですが、公式レースに参加するのであれば、まずはルールを正しく理解し、その範囲内で創意工夫を凝らすことが大前提となります。
本当の速さは“実効ギア比”と駆動効率で追求する
ルールで定められたギア比が変更できないのであれば、速さを追求する道は閉ざされてしまうのでしょうか?もちろん、そんなことはありません。先にも述べた通り、ぼくたちにはタイヤ外径の調整という、合法かつ非常に効果的な手段が残されています。同じ3.5:1のギア比でも、タイヤの外径を26mmから27mmに大きくすれば、実質的な最高速は伸びます。逆に25mmにすれば加速重視のセッティングになります。この「実効ギア比」をコースに合わせて最適化していくことこそ、セッティングの醍醐味と言えるでしょう。
さらに、忘れてはならないのが駆動効率の追求です。いくら強力なモーターとハイギヤードな設定を用意しても、そのパワーがギアや軸受けの抵抗によって失われてしまっては意味がありません。カウンターギアとスパーギアの間に適切なクリアランス(遊び)を設ける「位置出し」や、ホイールシャフトがブレずにスムーズに回転するように調整すること、ベアリングの脱脂や注油といった地道な作業の積み重ねが、最終的なマシンの速さに直結します。ルールで変更できない部分があるからこそ、こうした細部の作り込みが勝敗を分けるのです。
常に立ち返るべきは公式のセッティングガイド
ミニ四駆のセッティングは非常に奥が深く、時には情報が錯綜して「何が正しいのか」が分からなくなってしまうこともあります。そんな時、ぼくがいつも立ち返るようにしているのが、タミヤ公式サイトに掲載されている「マシンセッティングガイド」です。

ここには、ギア比とは何か、タイヤやローラーにはどんな役割があるのかといった、セッティングの基礎となる考え方が、非常に分かりやすく解説されています。自己流の解釈や思い込みで迷路に迷い込んでしまった時、この原点に立ち返ることで、頭の中が整理され、次の一手が見えてくることがよくあります。新しいMEシャーシという未知のマシンを相手にするからこそ、こうした基礎を疎かにせず、一つひとつ着実に理解を深めていく姿勢が重要になると、ぼくは考えています。
発売日に向けて。ぼくのMEシャーシ初期セッティングプラン
ここまでの考察を踏まえ、実際にライザンを手に入れたら、どのような手順でセッティングを進めていくか。発売日にサーキットへ駆け込み、すぐにでも有意義なテスト走行ができるよう、ぼくなりの初期セッティングプランをまとめておきます。もちろん、これはあくまで現時点での仮説ですが、具体的な計画を立てておくことで、当日の動きは格段にスムーズになるはずです。
まずは駆動抵抗の徹底排除から – MEの素性を引き出す
新しいキットを組む上で、何よりも最初に行うべきこと。それは、駆動系のポテンシャルを100%引き出すための丁寧な作業です。特にMEシャーシは「POM樹脂による低損失」を謳っているだけに、その性能を最大限に活かしたいところです。
まずは説明書通りに素組みし、手でタイヤを回してみて、どこかに抵抗がないかを確認します。ギアの噛み合わせがきつすぎる場合は、少し慣らし走行をさせて当たりをつけます。この時、グリスはごく薄く塗るのがポイントです。ホイールがシャフトに真っ直ぐ刺さっているか、タイヤが偏心していないかも入念にチェック。小径タイヤは少しのブレでも走行に大きく影響しますからね。モーターを載せずに空回しした時に、シャーという心地よい音だけが響く状態。この「ゼロベース」を完璧に作り上げることが、全てのセッティングのスタートラインになります。
タイヤ外径の最適値を探る – 26.0mmからのステップアップ
駆動系の準備が整ったら、いよいよコースでの走行テストです。まずはキット標準に近い26.0mmのタイヤ径で、基準となるタイムを計測します。この時のマシンの挙動、特にジャンプの姿勢やコーナーでの安定性をしっかりと目に焼き付けておきます。
次に、あらかじめ用意しておいた26.5mm、27.0mmのタイヤに交換し、同様にタイムを計測します。おそらく、外径を大きくするにつれて、ストレート区間のスピードは向上するはずです。しかし、同時にジャンプで飛距離が伸びすぎたり、加速が鈍くなったりといった変化も現れるでしょう。この「速さ」と「安定性」のトレードオフの関係を見極め、その日のコースレイアウトにとって最もバランスの良い外径を見つけ出す。この地道な比較テストこそが、MEシャーシの“おいしいところ”を引き出す鍵になると確信しています。
コースに合わせるブレーキと姿勢制御 – “飛び”を殺す技術
超速ギアとタイヤ外径の拡大によってマシンのトップスピードが上がってくると、次に問題になるのがジャンプセクションでの安定性です。特に、スロープを駆け上がった後のマシンの姿勢は、完走率に直結する重要な要素。ここで効いてくるのがブレーキセッティングです。
ぼくの基本的な考え方は、フロントブレーキをメインにし、マシンの前側からコースに接地させる「フロントイン」の姿勢を作ることです。フロントブレーキを強めに効かせることで、ジャンプの突入速度を抑え、マシンが前下がり(ノーズダウン)の姿勢で飛び出すように仕向けます。こうすることで、着地時の衝撃をいなしやすくなり、コースへの復帰もスムーズになります。逆にリアブレーキは、速度を殺しすぎないよう、最低限の高さに設定します。この前後のバランスを、コースの起伏に合わせてミリ単位で調整していく。この緻密な作業が、超速マシンをねじ伏せる快感に繋がるのです。
準備は万端!発売日に備えるための機材&パーツリスト
思考を整理し、計画を立てたら、あとはそれを実行するための「モノ」を揃えるだけです。発売日に最高のスタートを切れるよう、ぼくが今から準備しておこうと考えている機材やパーツを、備忘録としてリストアップしておきます。これらは、ぼくのブログでこれまで紹介してきたアイテムとも重なりますが、それだけ信頼性が高く、欠かせない存在だということですね。
計測と練習の基盤となる環境
何よりもまず、安定して走行テストができる環境が必要です。自宅に常設しているオーバルサーキットは、基本的な駆動性能や直線での伸びを確認するための最高のベンチマークになります。そして、駆動系のスムーズさを保つためには、高品質なベアリングオイルが欠かせません。また、比較テストを行うためには、基準となるモーターを決めておくことも重要です。まずは扱いやすく、トルクとスピードのバランスが良い「トルクチューン2モーターPRO」あたりが、MEシャーシの素性を探るための最初のパートナーとして最適だと考えています。
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足回りとシャーシの比較用パーツ
タイヤ外径の比較テストを行うためには、いくつかのホイールとタイヤのセットを事前に準備しておく必要があります。見た目のモチベーションも上がるゴールドリムのホイールは、そんなテストデーの気分を盛り上げてくれる最高のアイテムです。また、MEシャーシの性能を正しく評価するためには、比較対象となるシャーシを用意しておくのも面白いかもしれません。例えば、MSシャーシの軽量センターユニットを持っておけば、シャーシ単体の重量や剛性の違いが、走りにどう影響するのかを体感できるはずです。
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マシンの性能を引き出す育成ツール
モーターやバッテリーの性能を安定させることは、信頼性の高いデータを取るための絶対条件です。モーターの慣らし(ブレークイン)を正確に行える専用ツールや、電池のコンディションを管理する充電器は、今やレースで勝つためには必須のアイテムと言えるでしょう。また、展示用の電飾カスタムを考える上では、ダミー電池のようなアイテムも役立ちます。走行用のバッテリーとは別に、省スペースで電源を確保できるため、アイデアの幅がぐっと広がります。
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